物忘れから始まった体質改善
先日いらしたお客様がお忘れ物をして、それがフェイシャルでは必須のことだったので「ショックー」とおっしゃっていました。
たまに忘れることだって、ありますよね。
「暑さのせいですよ。私はそういうときは年齢のせいにせず、暑さのせいにしてます」と言いました。
これは別に慰めようとして言ったわけではなくて、本当に暑くて物忘れが多くなることがあるのです。
心臓と夏の関係性
夏は一年の内で最も「汗」が出る季節です。
この「汗」と「物忘れ」に繋がりがあるのです。
五行学説でいうと、夏に活発になる内臓が「心(心臓)」です。
心の主な機能は二つあって、その一つに「血脈を主る」というのがあります。
心臓の拍動によって全身に血液を循環させるのが心の主な機能というのは誰でもご存じですが、他にも中医学では「五液」と言って、それぞれの内臓に関係する体内の液体もあります。
汗は体にとって大事なうるおい
夏に活発的になる心の液は「汗」です。
なので汗のトラブルの場合、心の状態を疑うことが多いです。
そして「汗」は体内の水分(津液)が変化したもので、体の潤いとも言える「津液」と「血」は源を同じくしてます。
つまり、汗は体の中の潤いが外へ出たものであり、その体内の潤い(水分)と血は、同じものから作られている(汗血同源)のです。
汗はべたべたしますし、匂いもあるので「老廃物」と、体内の余分なもののように思う方が多いですけど、全く違います。
老廃物も若干混ざってはいますが、ほとんどが肌のみずみずしさを保つものと同じ「水分」です。
そもそも老廃物は便や尿にして出すのが体のしくみで、皮膚も排泄器官ではあるのですが、それは主たる機能ではありません。
「汗」は、体の潤いを保つ大事な液体なのです。
心臓は意識とも関係がある
もう一つの心の主な機能が「神志を主る」で、精神・意識・思惟活動のことを指しています。
つまり心が健康なら、深く考えたり、集中できたり、明晰だったり、そういった脳の働きにも心は関係しています。
夏に活発になる「心」ですが、逆に心が損なわれやすいのも夏です。
心には「心陽心気」と「心陰心血」があり、このバランスが崩れると、火照りや睡眠障害といった症状が出ます。
さて、夏は汗をたくさんかきますよね。
汗は津液が変化したもので、それは血と源を同くしている。
汗をたくさん出すと一時的に体内の水分が少なくなりますから、補充するために血を津液に転化します。
ですから汗をたくさん出すことはと、血の不足にもつながるのです。
心は血脈を主りますし、心の液は汗ですから、血の不足や汗を出し過ぎるといったことは、心にとってはかなりのダメージになります。
もともとの体質に外的な要因も重なり
脳はかなり複雑なことをやっていて、集中したり、記憶したり、その機能を果たすためには、脳に十分な気血が必要です。
トリートメントを受ける際に大事なことを忘れてしまったお客様は、もともと火照りを感じるほどの暑がりでした。
夏を迎え、火照りがつらくなってきて、よく汗も出るようになりました。
「夏」「猛暑に近い暑さ」「汗」「火照り」
これらを総合すると、もともと体内にあった「内熱(火邪)」に、「暑邪」という夏の邪気が侵入して心陰心血の損傷が広がった。
やかんを火にかけると中の水が蒸発して少なくなっていくのと同じで、火邪や暑邪の熱によって火照りがあり、その熱で体の中の水分が減少傾向に。
実際に最初の頃、火照りのほかに、口の渇きや肌の乾燥を実感されていました。
それと同時に夏になって汗をかくようになり、体内の水分は失われます。
心陰心血を補充しようにも、その原材料は熱(火照り)によって慢性的に不足してますし、さらに心は内熱や暑邪で弱り気味で十分に生成することもできない。
それにより、脳(心)に気血が十分に行き届かず、忘れっぽくなる。
食養生で根本から解決(体質改善)する
ここまでわかれば、どうしたら良いか自ずとわかります。
まず、これ以上体内の熱を加えないこと。
室内の温度調整だけでなく、辛いものやお酒など体内で熱を生むものを控えます。
と同時に陰を消耗させないこと。
陰は夜に充実しますから、夜更かしせずしっかり睡眠をとることと、スマホや読書などで目を酷使することも控えます。
激しい運動やサウナなどで大量に汗を出すことも一旦お休みです。
それに加えて火照りを鎮めることと、心陰心血を補うのを同時にやります。
そうすることで早くバランスを整えられますが、どうやるかというと、毎日の食事に取り入れます。
体内の余分な熱を取り去る(清熱)食材と、陰を増やす(滋陰)作用のある薬膳食材を使うと良くて、ちょうど今が旬の夏野菜がおすすめです。
さらに、汗を出すには、皮膚の外へ押し出すパワー(気)がいります。
ですから、汗をかくというのは気の消耗(疲労)にもつながります。
ですので、気を補う食材を組み合わせると良いのですが、効率的に気や陰を増やすために、とくに脾(胃腸)の気を補う食材が良いです。
それをお伝えしたところ、2週間もたたずに「熱を感じることがなくなった」とおっしゃっていました。
健康状態は、良いことも悪いことも必ず体の外側に現れますが、それを読み取って根本原因がわかれば、1週間ほどの食養生で体の変化を感じられます。
火邪や暑邪は、その熱によって炎症を起こしやすく、肌の赤みや赤ニキビも現れやすくなりますが、そういった肌トラブルも食養生で根本から解決することができます。